但馬愛の園グループ職員の皆さん

2020年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

介護保険制度が創設されて早や20年を迎えます。なくてはならない制度と言えます。ただ家族の介護を理由に仕事をやめる人はまだ10万人もいるとのことです。報道によりますと「介護保険は今、財源と人材が不足している、とりわけデイサービスや特別養護老人ホーム等では、空きがあるにもかかわらず人材不足のために利用者を受け入れることができない問題があり、その結果介護離職は減らず、一部の介護事業者の中にはこの職員不足が理由で倒産する企業も出ている」とあります。

私たちはこのような情勢の中で、今後どう対応していくのかが大きな課題です。各リーダーをはじめとし、全職員が少し先を見つめ、考え、それを意見として、運営に参加していただきたいと思います。

但馬愛の園グループでは、本年度のヴィジョンの一つに「挑戦」があります。グループでは「小規模多機能施設」開設を挑戦の一つとし、現在但東町小谷において建設中であります。本年2月末に竣工する予定です。これは高齢化が著しい但東町において、独り暮らしや老夫婦の方々が、冬場においても安心して生活していただくために貢献できるであろうと考えるからです。しかし、新たに職員を確保しなければならない、また但東町という過疎化が進む地域で、小規模施設の運営の厳しさが大いに考えられます。だからこそ「挑戦」するには十分な事業であると考えます。

さて、但東町に因んだ話です。但東町にお住いの職員はよく知っていると思いますが、但東町で著名な方は誰かと尋ねますと、必ず出てくる方のお一人に東井義雄先生という方がおられます。ここで東井先生について詳しく述べることはしませんが、この東井先生を教育界の「国宝」であるといった方がいます。哲学者・教育者の森信三先生です。

東井先生は、実に多くの言葉を残されています。その内の一つに「太陽は夜が明けるのを待って昇るのではなく 太陽が昇るから夜が明けるのだ」があります。ぜひもう一度この言葉を読み返してください、そしてあなた自身でこれは、どう解釈すればよいのかを考えてみてください。

私は出石に赴任して間もなく、ですから約20年前に、この言葉が書かれた「飾り皿」をある方からいただきました。何度も読み返しその意味を知ろうとしました。私なりの考えですが、この「太陽」を「人」に置き換えますと、「人は自分は何もしないで、周囲の環境が整ったのを待って、それに合わせるのではなく、人が自ら目標に向かい行動することによって、環境そのものが変わってくる」と考えました。続いて「人」を「自分」に置き換えてみました。胸のうちに何か、「やるぞ!」という思いが湧いてきたものでした。以来20年この言葉に励まされ、今日までまいりました。

励まされた言葉といえば、ぶどうの枝福祉会に入職して以来、旧約聖書の箴言というところに書かれている「あなたのなすべきことを主にゆだねよ、そうすれば、あなたの計るところは必ず成る。」(箴言16章3節)という言葉です。

但馬愛の園グループそれぞれの施設建設において、地中の基礎部分には聖書が、天井裏の梁には、この箴言にある言葉が書かれた板が張り付けられています。私たちは、あれやこれや考えをめぐらしますが、最終的にはすべて、神様が道を整えてくださっています。

同時にもう一つの聖書の言葉が、今日まで励まし続けてくれました。同じく旧約聖書の詩篇という所に書かれています。「涙をもって種まく者は、喜びの声をもって刈り取る。種を携え、涙を流して出て行く者は、束を携え、喜びの声をあげて帰ってくるであろう」。(126章5節)という言葉です。

私たちが取り組んでいるどの事業も多少の困難は伴いますが、ご利用者やその家族の方が、但馬愛の園グループの施設を利用してよかったとおっしゃってくださる声を聞くだけで、この施設を運営して良かったと思わされます。施設の建物や設備がよいからではなく、多くは職員の対応を評してのものです。これを見ましても、私たちが評価されるのは、一人一人の職員がどのようなサービスを提供しているかであるということです。

法人の理念は、皆さんご存じの通り「仕える精神の実践」と「あなたも行って同じようにしなさい」です。これは法人の創設者である、斉藤信男・溢子夫妻が「神様に仕えるように人にも仕えよう」という考えから来ています。

職員の皆さんには、もう一度この理念を理解され、あなたの態度や言葉で傷つく利用者や家族が、出ないようにと望むばかりです。そして名実ともにリハ・看護・介護等のプロ集団となりたいものです。あなたの挑戦の一つに、「あの人は誠にプロのスタッフだ」と呼ばれるようになるということをぜひ加えてください。

2020年あなたにとりまして、最高の年となることをお祈りいたします。

以 上

2020年1月5日

但馬愛の園グループ

総施設長 小川 憲一